この秘策で「できる人」をひきつけろ

  1. 多くの経営者が間違えるポイントは、「資質」と「志向」の違いに気付いていないこと。「資質」とはその人が持っている能力で、「志向」とは学生側のニーズ。多くの企業は自社が求める資質面を問題にし、その資質が必要とアピールするため、学生側の志向が抜け落ちている。いい人材に来てもらうためには、相手の志向がどこにあるかをしり、それでひきつける必要がある。
  2. まず自社に興味を持たせて、入社したいという動機づけをさせ、つぎにその中から資質を見極めてターゲットを絞る。(まずは志向ありき。)
  3. 中小企業の場合、世間的な企業イメージを持たれていないのだから、会社説明会での印象が命運をわけるのだが、多くの人事担当者は会社説明会を「会社の仕事内容を説明する会」と勘違いをしている。会社説明会は「会社のイメージをよりよく印象付ける会」であり、仕事内容を説明している場合ではない。どんな志向の学生をひっぱるかを考え、その志向に響く戦略を考える必要がある。
  4. 会社説明会では、絶対に採用しないとわかっている学生にも、「いい会社だな」と思わせることが大事。一度でも会社を訪れた学生は、無意識に広告マンになってくれている。だからこそ、採用担当者にはコミュニケーション能力が必須。
  5. 採用担当者や経営者にはコーディネート力も必要。独立志向が強い希望者に安定志向の先輩を当てると、まず入社させることができない。コーディネート力のある採用担当であれば、かならずそういう人間を用意する。
  6. 相手があげてくる条件や志向のうち、どれが譲れないものなのかを見極め、その優先順位を考える努力をしなければならない。独立志向、安定志向、給料の多寡、週休何日、あるいは研究に没頭したいなど、将来像まで含めて、学生達はさまざまな条件や要望を出してくる。
  7. 条件や志向を「マスト」と「ウォント」と呼んで、絶対に譲れないものを(マスト)と、そうでないものを(ウォント)に分けて接している。条件や志向がマスト、ウォントのどちらか知るためには、将来どうなりたいか、5年後どんな自画像を描いているかを聞く。
  8. おぼろげだったイメージをふくらませていくと、相手が絶対に譲れないと思っていたものがガタガタと崩れていく場合もある。「社長になりたい」と言いつつ、「でも休みは週二日はほしい」などと言う時に、どちらが優先するのかを問うと、「どちらも」と答える。「両方は無理」と言えば、本人は考え込み、社長になりたいという目標が「ウォント」であることに気付く。
  9. 相手の未来像に自社を無理に合わせないこと。将来どうなりたいのかという、相手が絶対に譲れない線と、自社が目指しているものや5年後に用意できる環境を照らし合わせて「彼のマストはわが社で実現できる」という自身がない限り、口説いてはいけない。それはルール違反だ。
  10. できる営業マンが面接をする時に無意識に見ている資質は、「達成意欲」と「ストレス耐性」。長期的に見て戦力になれる人材、もしくは経営者に近いレベルの人材を求めようというのなら、達成意欲の強い、つまり人生の目標バーを高く設定している人材を選ぶ。しかし、入社2,3年目あるいはもっともっと短期的に業績をあげる営業マンがどうしても欲しいというのであれば、人生の目標が高い人材というよりは、「達成ぐせ」の身についている人材を採るほうが即効性がある。達成ぐせとは、自分でこうと決めたことや人に決められたことを、決められたようにやらないと気がすまないタイプ。
  11. 「ストレス耐性」とは、プレッシャーに対する精神的な強さ。営業には欠かせない資質。
  12. 面接の場で異常なほどしゃべる人間は、相手から突っ込まれることが怖くて防御心が働いてしまっている場合あ多く、ストレスに強いと言えないタイプ。ストレス耐性を調べるためには、面接の時に実際にストレスをかけてみるとわかる。所謂「圧迫面接」をやってみる。
  13. 圧迫面接は相手のモチベーションを急速に下げ、入社意欲をなくす側面があるため、慎重に行う必要がある。十分に入社意欲を高めてから、圧迫面接をするとよい。
  14. ストレスに強いと、ストレスに鈍感は全く違う。色々な方法で、その場の空気がわかる人、つまり鈍感でない人を選び出さなければならない。
  15. 他社に内定を受けている学生に対して、多くの採用担当者が犯す失敗は、「あそこへは行かないほうがいい」と言ってしまうこと。言われたほうの気持ちをますます他社に向かわせる結果とる。もし迷っているのであれば、他社をけなすことなく、自らその気をなくさせる方向にもっていかなければならない。
  16. その会社に行きたいという理由を消していく(気持ちを白紙に戻す)、白紙化という作業が必要。
  17. 「商社はダメだ」というのではなく、「なるほど、商社に行きたいのか」と言ってみる。そして、理由を聞くと、「世界をまたにかけて大きな仕事がしたい」とか「得意な英語を活かしたい」と答えるだろう。それに対して、「海外に行きたいのであれば金融のほうがいける」等、相手の志向を打ち消すのではなく、広げてやる。第三の選択肢を与えると、相手は商社に行きたい理由がなくなり、自分の中にあったニーズが打ち消されていく。
  18. 相手が白紙に戻って、自分が本当にやりたい仕事を見直し、「自分は何を根拠に会社を選んでいたのだろう」と考えたときを狙って、自社の魅力をアピールすればすくなくとも、耳を傾ける姿勢にはなる。
  19. 簡単にもらった内定は、簡単に辞退する可能性が高い。待たされれば待たされるほど入社意欲は高まる。相手がいい人材であれああるほど、あせらずにぎりぎりに引き伸ばしてから内定を出すべきだ。