「できる人」の本当の基準

  1. 経営者の多くは、人材に向き不向きがあることに意外と気付かない。よくあるのは勘違いに頭がよければ何でもできると思っている、こと。頭のよさはもちろん不可欠の条件だが、商品開発、マーケティング、営業などで頭を使う方向はそれぞれ違う。
  2. 人材には育つ人材と育たない人材がある。新卒でも違う親から生まれ20数年間それぞれの環境で生きてきているので、素材として違うのは当たり前。
  3. 学歴が全くない人間はいい人材でない、という共通認識はある意味で正しい。そこには確立の問題が横たわっているからだ。学歴がよくないと、できる人材も少ないという現実がある。それを選び出す手間を考えれば、大勢の応募者が殺到する大企業が、ある程度足きりするのもやむをえない。
  4. ただし、「学歴がある=いい人材」という公式は成立しない。「勉強の頭のよさと仕事の頭のよさは違う」のだ。子供のころから塾通いをしていれば、誰でもそこそこの学校には合格できてしまう。
  5. 仕事ができる人材の頭のよさとは「素頭がいい」こと。素頭のよさは、「コミュニケーション能力」と「論理的思考能力」で判断できる。
  6. コミュニケーション能力の高い人は「聞き上手」であり「聞かせ上手」。
  7. コミュニケーション能力とは、右脳でインプットし、左脳でアウトプットできる能力
  8. 最低限のレベルは相手が言っていることが理解できる段階。次のレベルは、言葉に出していないが、相手が抱いている感情を理解できる。さらに上のレベルは、相手が考えていることの、感情以外の部分がわかる能力。最終レベルにいる人間は、お互いが100%分かり合うのは不可能である、という前提にたっている。
  9. コミュニケーション能力を見抜くには、「会話のテンポによどがないか」、「自分が話している時に、相手の考えをつかんでいるか」が判断基準。
  10. 面接時に重要なのは、学生自身が話をしているときの態度。コミュニケーション能力が高いと、「君の話長いよ」などと思っていることが汲み取れる。そういった学生は必ず相手の態度を見ながら臨機応変に話す。用意してきた話や的外れのことをひたすらしゃべりつづける学生は、コミュニケーション能力がない。
  11. 論理的思考能力とは、商品開発とか、マーケティングなどができる能力。
  12. 焼肉面接で、シミュレーション能力がはかれる。焼肉を黒こげのやまにしてしまう段取りの悪い人間は、仕事ができないと断定して間違いない。
  13. 段取りがいい人間は、シミュレーション能力がたかいため、問題がおきる可能性を頭の中で予測して行動する。結果、常に先手を打つことができて、問題を回避できる。段取りの悪さは致命的。やっかいなことに、この能力はうまれつきのもの。
  14. 「完成形を想像する能力」は、リーダーとして重要な条件。1年後、3年後、10年後、とその人間をどういう形にするかという完成形とそのプロセスが見えないと、リーダーとして失格。理想とする完成形を頭に想定し、それに沿った成長のプロセスをシミュレーションできなくては、部下に的確なアドバイスはできない。
  15. 「とりあえず」で仕事を始めずに、明確なゴールを想像し、途中の過程が見えてから行動することを習慣付ける。
  16. ビジネスマンに必要な素質は3つ。「素頭のよさ」、「素直さ」、「エネルギー量」。
  17. 仕事はやってみなければわからないことが多い。それをやる意味がわからなくても、ともかく言われたとおりにやってみようと素直さを持っているほうが、仕事の覚えもはやく、戦力になりやすい。素直な人材とは、「自分の価値基準を持っている人」。
  18. 同じ価値観をもっているかどうかが問題なのではなくそれぞれの価値観のレベルがどれほど高いかが問題なのかがわかっている。
  19. エネルギー量の大小が本当にわかるのは、その人間のモチベーションの高さをはかったとき。「人生の目標のバーの高さ」。「人生の目標のバーの高さ」は他人が高さを変えてやることはできない。自分で設定したバーの高さは、自分で上げない以上、周りの誰も高くすることができない。
  20. 将来社長になりたいと本気で考えている人間は、まずモチベーションが高い。
  21. バーを越える能力はもちろん必要だが、そのバーをしっかり高い位置に掲げられる能力があってこそ、個人はもちろん、企業の業績向上に繋がるのだ。
  22. 一芸に秀でた人材は、自分なりの人生哲学を持っている。一芸に秀でるレベルのひとは、「○○になりたい」という気持ちを優先させ、さまざまなものを犠牲にしている。そこまでして打ち込んでいるからこそ、「自分は何のために生きているのか」という人生哲学にたどり着いていても不思議ではない。
  23. どのくらい仕事ができるようになりたいか、どのようになりたいかというのは、結局は自分がどう生きたいか次第。
  24. やりがいのある職種とか、やりがいのない職種があるわけではない。やりがいはその人がやる仕事の結果に、期待がかかっているときに生まれる。ボランティアに従事している人達がやりがいを感じるのは、彼らの仕事に寄せられる期待が大きいからだ。
  25. 「責任感の強いやつだ」と感じる人間には共通点がある。親がとてもしっかりしていること。親の性格や価値観が、そのまま子供の性格や価値観を映す鏡になっている。
  26. 大企業には大きな悩みがつきまとう。応募してくる人のほとんどが、安定志向の人材ということになるからだ。ただし大企業の場合は90%が安定志向の社員でも十分経営をおこなえるだけのノウハウができており、言われたことをまじめにやってくれる人材の採用をすればよい。
  27. しかし5%ぐらいは、社風に反する人が必要。はみだし者がいないと、会社は活性化されない。
  28. ほとんどの大手企業は採用担当に安定志向の人間を当てているため、安定志向があつまる。自社に興味のある人材から選ぶのではなく、こちらで選んだ人に自社への興味を持ってもらうことが採用の基本。
  29. 自分は仕事ができなくても人の指導ならできると思っている経営者なり上司がいるとすれば大きな間違いだ。実際にできない人が教えるのは不可能。ナンバーワンとは言わないが、少なくとも上位5%ぐらいに入る人でなければ部下を持つ資格はない。
  30. 仕事が遅いと言われたら、それは仕事ができないと言われているのに等しい。スピードとクオリティは比例する。仕事ができるようになりたければ、まずスピードを身につけること。どんな仕事をするときにも、自分に負荷をかけて、時間と戦う。1週間かかると思える仕事を3日で終えるスケジュールを組む。そのスピードになれれば、当然ながら仕事は早くなる。
  31. 短い時間で同じ仕事をこなせるようにするため、頭を使った工夫が必要になる。その頭を使った工夫こそが、仕事の質に繋がる。
  32. 仕事のスピードの速さ=処理能力の高さ。
  33. ほとんど人は仕事をスタートしてから終了するまでの速さ、ととらえているが、重要なのは仕事をスタートさせるまでの速さだ。特に頭を使って何かを作り出す企画のような仕事において重要。
  34. 仕事をスタートさせるまでの早さは即処理を習慣付けることで訓練できる。目の前の疑問や課題をあと伸ばしにせず、その場で答えを出そうとする。そうすれば、ウォーミングアップなしで仕事に取り掛かれる。
  35. 処理能力を高めるために、「同時にいくつものことを考える」ようにする。そのためには素早く頭の切り替えを行うこと。厳密にその瞬間に考えていることはひとつだが、次の瞬間には別のことを考えている。初めは3つか4つの案件からスタートし、3ヶ月ぐらい続けると同時にいくつものことを考えられるようになる。
  36. みんなで考えることに価値はない。10人それぞれが1つの完成した商品をもちよって意見交換するならともかく、10人でひとつの商品を考え出すことに意味はない。みんなでやれば、自分の実力を露呈せずにすむという、できない人らしい発想。
  37. みんなで考えるといっても、実際に参加している人の大半は何も考えていない。それでいて、仕事をやっている気分は味わえるので危険。
  38. 器の大きさもまた努力で身につくものではなく、20歳までの環境によるところが大きい。目先の利益に左右されるような器の小さな人間はしっかり見抜きたい。
  39. 器の大きさは過去のエピソードではかることができる。物事をどこまで長期的に考えているか、友達との関係やクラブ活動の参加の仕方、何に価値を置いて仕事をしているか、など。
  40. 最終的にその人がどこをめざしているかで、器の大きさがわかってしまう。
  41. 二年目のジンクスはおごりが招いた結果。
  42. イチローが活躍し続けるのは、彼の自己否定の考え方による。自分の力を十分と考えず、「まだまだ未熟」と考える。トップレベルのスポーツ選手によくある考え方。謙虚に自己否定しつづける。
  43. ビジネスの世界でも同じ。成績を維持し続けるには、自己否定の考え方が必須条件。
  44. 自己否定とマイナス思考は違う。マイナス思考はやる前から、結果を悪い方向に予想すること。自己否定は現在の自分の力を否定すること。マイナス思考は過去から将来までの全部の自分を否定すること。
  45. 「これまでの自分にはまだまだ満足がいかない」という事項否定は決して将来の自分を否定していない。「だからもっと努力して今以上を目指す」というプラス思考に転じていく。
  46. プラス思考は成功への鍵
  47. 自己否定を習慣化するためには、自分をはかるものさしをもつこと。ものさしは10点満点でも5点以上をつけてはいけない。良い点がとれるようになってきたら、ものさし自体を伸ばして、自分につける最高点を5点にとどめておく。これを続けると永遠に自分に満足することなく努力し続けることができる。
  48. 資格ばかりを集めるできない凡人。
  49. 就職活動では「とりあえずどこかに入りたい」という気持ちがまず先にたって、「入ってからどういう仕事ができるか」というところまで考えない学生が多い。そこで「とりあえず資格」となるが、実際にはほとんど役に立たない。そういった勉強では、平均的な能力しか身につかないし、平均的な能力なんてまるで意味がない。
  50. これからのぞまれるのは、「普通の人では売れないものを売ることができる」ぐらいの営業力、「普通の人では作れないものを開発できる」くらいの企画力を持った人間。
  51. どんないい人材があつまっても、その会社がその人を生かすシステムを持っていなくては、宝の持ち腐れ。1つの企業の業績を上昇ラインへ持っていくのは、学生側にも経営者側にも努力が必要。
  52. 仕事選びは、どういう人生を選ぶのかで決まってくる。何のために生きるのか、どんな生き方をしたいのかを考えなければ、仕事選びなどできない。
  53. 仕事というものは多かれ少なかれ社会のニーズから生まれており、社会への貢献を感じることができる。その充実感が生きがいであるはず。
  54. 仕事とプライベートを分けたがる人は、たいていの場合、「やらされ感」のある人だ。
  55. まずは仕事を全力でやること。望まれているレベルを超えれば、「やらされ感」から抜け出すことができる。