追いかけて。

何がなんだか分からなかった。

「俺に追いついてみな」

そういわれて、僕はその男を追いかけ始めた。



しかし、そいつは尋常じゃない速さだった。

繁華街の中、さまざまな障害物があるにもかかわらず、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のソニックにも負けないようなスピードで駆け抜けていく。

しかし、僕も負けてはいなかった。

懸命に、追いかける。遮断機が閉まりかけ、電車が迫る中、線路を潜り抜け、追い続ける。



それでも、追いつかない。

見失わないのがやっとだった。

むしろ、ぎりぎりで見つけられていることが奇跡に近いほどに。



終いには、学校の中まで入っての大追跡。

給食室から運搬用のエレベーターに乗り込み、はたまたダストシューターに飛び込み。

そして、ついに秘密の?地下道を潜り抜けると、宴会場に辿り着いた。

逃げ続けていたその男は、すでに酒を酌み交わしている。

僕を見つけると、おめでとう、と一言。

いつの間にやら、その宴に混じり、飲めや歌えやしているうちに目は覚めたのだった。